絶滅しなかった衝撃の理由

”シーラカンスのトリビア”を描いたイラスト 画像提供:川田一輝さん
 国民的な大ヒットとなっている任天堂Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』。多数の著名人が作品のファンを公言しており、プレイしてない人でもその名を知らない人はいないほどの社会現象になっている。そんな状況の中、SNSでは作品の中に登場する虫や魚の生態について調べたツイートがたくさんの「いいね」を集めている。漫画やゲームがきっかけで歴史に興味を持ち、日本史や世界史が得意になるというケースも聞くが、どうやら『あつ森』に登場する魚や虫がきっかけとなり、生態系に興味を持つ人が増えているようだ。

■ゲームというより“実生活” コロナ自粛がヒットの追い風になった『あつ森」

 新型コロナウイルスで外出自粛が強いられる中、任天堂Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』(愛称:あつ森)が、世界で1300万本以上、国内だけで400万本以上のヒットを記録している。芸能界でも『あつ森』をプレイしていると公言する人は多く、攻略本もヒットするなど社会現象となっている。

 同作は、無人島に移住したプレイヤー(ユーザーが操作するキャラクター)がどうぶつと暮らしながら、釣った魚や捕獲した虫などを売ってお金(単位はベル)を稼ぎ、家を建てたり、家具を製作したり、洋服を買ったり、ガーデニングをしたりして島を自分好みに開発していく。「ショッピング」「おしゃれ」「おでかけ」など実生活にリンクする点や、無人島でのスローライフが自粛中の癒やしとして多くの人に受け入れられているようだ。また、『あつ森』ではプレイヤーの島を飛行機で訪ねて交流できる。新型コロナウイルスの影響でソーシャルディスタンスが求められる中、ゲームを通じて友人と交流できる点もヒットの要因といえる。

 SNSでもハッシュタグ「#あつ森」は賑わいを見せている。そんな中興味深いのは、ゲームに登場する魚や虫の生態についてのトリビアがたくさんの「いいね」を集めている点。ゲームをきっかけに生態学に興味を持つ人が増えているようなのだ。

■作品に登場する魚のトリビアにたくさんのいいね「魚のチョイスとマニアックな解説に大拍手」

 9万以上のいいねを集めたシーラカンスのイラストを描いたのが、魚の生態を分かりやすく伝えるイラストをツイッターで公開している「かわちゃん」こと川田一輝さん(@honmachi169)だ。「シーラカンスが絶滅しなかったのはまずかったから」という、驚くような解説を添えたことが反響を集めた。ちなみに『あつ森』では、シーラカンスは雨が降ったときにしか出現しないレアな魚として知られている。

 「『あつ森』ユーザーの方から『知らなかった!マジ!?』など好意的な反応をいただけました。本当のことを言うと、シーラカンスが絶滅しなかったのは深海の環境の変化が少なかったためなどいくつかの理由があるのですが、まずは興味を持ってもらえるようにキャッチーな部分を意識して発信しています。詳しく知りたい方は、そこからアカデミックに書かれた本を読むべきだし、僕はバトンを渡す最初の係です(笑)」(川田さん)

 そんな川田さんの本業は、関西を中心に活躍するラジオDJ・アナウンサー。神戸のFM局の昼のワイド番組や音楽番組のほか、テレビの釣り番組のナビゲーターも担当する。魚と釣り好きが高じて「さかなのおにいさん かわちゃん」として、イラストや歌で子どもに魚の魅力を伝える活動も行っている。

 「子ども向けに魚のイベントをしたときに、まったく聞いてもらえなかった経験から、イラストなら興味を持ってもらえるのでは、と描き始めました。イラストはまったくの自己流で、図鑑を見ながら毎日描いていくうちに少しずつマシになっていったかなという感じです。最初は鉛筆、その後水彩画で描くようになり、今は仕事の合間にも書けるようにiPadで描いています」

 優しい雰囲気のイラストは独学とは思えないクオリティ。 「こんなイラスト本があれば子どもに買いたい!」とSNSでも好評だ。魚の知識は、実際に海や川に行って生き物を探したり、本や図鑑を読んだり、日本さかな検定を取得して学んだ。水族館の職員や漁師の友人から教えてもらうこともあり、日々アップデート中。魚の魅力を伝える活動によって、子どもたちやこれまで魚に興味のなかった大人に興味を持ってもらい、海を少しでも綺麗にしたいと話す。

 ちなみに、川田さんは大学時代に『どうぶつの森』シリーズにハマり過ぎて単位を落とした苦い経験を持つ生粋の“どうぶつの森”ファン。現在は奥様や友人のプレイ、ゲーム配信動画を毎晩楽しく見ているという。
「それぞれの生物に専門家がついていないと不可能なくらい、マニアックな解説に大拍手です! 特にデメニギスという頭が透けている深海魚は、『どのチョイスで入れたの!?』と笑いました。この魚、目を守るために透明な頭の中に目が内蔵されているんです。先端の目のように見える部分は鼻です。岩手より北に行くと、時々網にもかかるそうですよ」

■美しくボリュームたっぷりのあつ森博物館に感涙 生き物の好奇心を育んでくれる

 『あつ森』に登場する魚のイラストをアップするようになったきっかけは、川田さんの奥様から「このリュウグウノツカイってどんな魚?」と聞かれたことから。「リュウグウノツカイは人魚のモデルにもなったと言われていて、敵に襲われるとトカゲの尻尾のようにプチっと体を切り離して逃げることができます」。その後は『あつ森』をきっかけに魚の生態に興味を持った人から、川田さんのSNSに「他の魚も描いて!」「あつ森で釣りました!」とメッセージが届くことも増えた。

 “釣れすぎて”『あつ森』の中ではすっかり嫌われ者になりかけているスズキやブラックバスについて聞いてみると、「スズキは現実世界ではあんなに釣れません(笑)。シーバスといってルアーで狙う釣りがあるんですが、いまだに僕はボウズ(1匹も釣れない)の日もしょっちゅうあるくらい。スズキは氷で冷やしたお刺身を“洗い”で食べると美味しいです。ブラックバスも白身魚で実は美味しく、オスが卵を守ったりとイクメンな一面もあります」

 また、『あつ森』では捕獲した魚や虫を島に建てた博物館に寄贈すると、博物館内に展示されて鑑賞することができる。
 「あの美しくボリュームたっぷりの博物館が素晴らしいなと思います。僕も昔、チョコエッグを集めていて海洋堂さんの深海魚フィギュアで深海生物に興味を持ちました。あの博物館は、水族館や植物園を疑似体験できるような雰囲気で、たくさんの生き物に対する好奇心を育んでくれる美しさだと思います」。

 水族館と言えば、現在は閉館しているところも多い。川田さんに聞いてみると、
「閉館していても生物は生きて、元気に餌を食べて過ごしています。水族館の1ヵ月の維持費は一説によると数百万〜数千万円かかるとも言われているんです。新型コロナウイルスが落ち着いたら、『あつ森』で興味を持った人たちに、ぜひリアルな魚を見に行ってほしいですね。『あつ森』後は、きっと前以上に楽しめると思いますよ。それに、“自分の博物館もこんな風にしたい!”とかあつもり熱も燃えるかも」

 『あつ森』以前から水族館紹介イラストを描いている川田さんの今後の目標は「水族館紹介のイラストを一冊にまとめてスタンプラリー的に全国楽しく回れる本を作ってみたいです。水族館ごとに個性があり、その付近には美味しい食べ物や温泉もある。みんなの興味を広げられるような本が作れたら最高ですね。誰か声をかけて欲しいです(笑)」

(提供:オリコン)


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