ソロアーティスト、テミン覚醒

テミン メインアーティスト写真
 ソロアーティストとしてのポテンシャルを見せつけた、初の日本ツアー『TAEMIN Japan 1st TOUR ~SIRIUS~』の衝撃からわずか4ヶ月。春風と共にファンに届けられた朗報は、2度目の全国ツアー『TAEMIN ARENA TOUR 2019 ~X™~』開催だった。前回は全国各地のホール会場を精力的に廻ったが、わずか半年を経て実施されるアリーナツアーは、15万人を動員する桁違いの規模に拡大していた。大きな期待と緊張を孕んで開始したツアー直前には、日本での3rdミニアルバムの発売が発表され、その全容は公演中に徐々に明かされていった。アルバムやライブを通じてわかったこと-それは、ソロアーティスト「テミン」の覚醒だった。

■新たな一面も楽しめる奥行のある新作ミニアルバム『FAMOUS』

 8月28日に発売されるテミンの新作ミニアルバム『FAMOUS』は、なんとも意味深なタイトルである。そして、メインビジュアルの挑発的な強い眼差は、見るものを捉えて離さない。昨年11月発売の1stフルアルバム『TAEMIN』では自身の名を冠し、日韓ソロ活動の代表作を収録した内容をナチュラルなアートワークで包んで現在地を示してくれたわけだが、どうやら彼はこの短い期間で、そこから大きな一歩を踏み出したようだ。

 タイトル曲「Famous」は、低音ビートが効いた、彼の真骨頂とも言える激しいナンバーである。同曲は8月頭に東京ドームで開催された、『SMTOWN LIVE 2019 IN TOKYO』のステージで初披露され、ツアーの終盤でセットリストに加わった。歌詞の世界観は、ステージに立つテミン本人とも重なるように蠱惑的だ。ライブ中にこんなカタルシスを感じているのだろうか…そんな想像が頭をよぎる。自身のツアーだけでなく、S.M. ENTERTAINMENT所属アーティストが集結するイベントで、現ツアーに帯同するダンサーたちと凄みすら感じさせるパフォーマンスで観客を圧倒し、ソロアーティスト・テミンを鮮明に印象づけた。

 そして、彼の新たな魅力を湛えた意欲作「Slave」。今回のツアーではライブの中盤に披露され、回を重ねるごとに魅力が増幅していった楽曲である。静寂に包まれたセンターステージに現れる2つの影。ステージを二分する紗幕越しに、女性ダンサーと手を重ね、顔を寄せ合い、男女の機微をこれまでになかった艶やかな演出で魅せた「Play Me」。前半の静けさと、それまで抑え込んでいた感情があふれ出したような激しさの対比が印象的な「Drip Drop」と続いた後に見せた、「Slave」の妖しいきらめき。檻に見立てた空間の中で、女性ダンサー2人と男女の濃密なストーリーを紡いでいった。この没入感たるや!「僕にはこんな顔もあるんです」と、観客の反応を試すような演出には、すっかり翻弄されてしまった。

 ツアーでは披露されなかったが、アルバムに収録されている、男女の駆け引きを歌った「Tease」、細やかな息づかいが聴こえてきそうな「It’s you」は、「Slave」につながる深みを感じさせるナンバーである。ポップチューン「Exclusive」ともども、いつかステージでパフォーマンスされるものと今から心待ちにしている。

 アルバムのラストを飾るのは「Colours」。鮮やかな色彩やモノトーンにエッジの効いた配色といったイメージの多いレパートリーのなかで、こういったパステル調の爽やかなナンバーは珍しい。ライブでは、メインステージに登場した2本のステップが斜めになったり水平になったりと次々に形を変えていく、その上を踊りながら、楽し気に歌う姿が微笑ましかった。これもまた彼の魅力の一部分であるわけだが、なんと多彩な表情を見せてくれることか。キャパシティーの広がりに驚きを禁じ得なかった。

■テミンがツアーで実感したかった“ファンとの一体感”

 「(観客と)一緒にステージを作っていきたい」――これは、今回のツアーで、本人が何度も口にしてきた言葉だ。観客とのコール&レスポンスもすっかり板につき、掛け合いを楽しむ余裕も生まれたように思う。何よりも胸を打たれたのは、ライブのクライマックスに用意したバラードコーナーだった。失恋を歌った「I’m Crying」の切なさ。最愛の人への想いを込めた「いつかここで」のやさしく語りかけるような柔らかな響きに、ハッとさせられた。「世界で一番愛した人」では、夕焼けのような温かな光が射し込むなかで、テミンが歌い、観客が歌い、そして声を合わせて共に歌う。まるで、互いの足りないパーツを埋め合っているような、そんな親密な空気が会場を満たしていた。このコーナーを締めたのは、日本ソロデビュー作「さよならひとり」。前半は一人で舞い、途中からダンサーも現れて、深層な世界観を描き出していった。今回のライブは、こういった「静」と「動」の対比が随所に見られ、パフォーマンスに深みを与えていた。

 本編ラストの「HOLY WATER」で、こぶしを高くかざして観客と大合唱する姿には、このツアーにかけた濃密な時間と熱量の大きさを感じることができ、ステージを共に盛り上げたダンサー紹介の際には、ライブを引っ張っていくたくましさも加わったように見てとれた。

 テミンの新たな一面を発見し、成長に目を見張る、そんなサプライズに満ちた3ヶ月間だった。果敢に挑戦する姿に、ソロアーティストとしての欲が出てきた様子も垣間見えた。そんな彼が今回のツアーで強く願い、実感したかったもの、それは“ファンとの一体感”だった。ライブはもちろんのこと、至る所でその思いを感じとることができた。自身の誕生日(7月18日)にインスタグラムを開設したこと、東京・渋谷Abema Towersに新設された公開スタジオ「UDAGAWA BASE」で行われた生放送(8月1日)での率直で真摯な発言なども、少しでもファンに近づこうとする姿勢の表れであったと思う。

 グループでの活動とはひと味違った、ソロ活動での達成感を味わった彼は、次回のステージで我々にどんな景色を見せてくれるのだろうか。存在感が増したことによって、アリーナのメインステージが小さく見えたのは、おそらく私だけではないはずだ。

文・カツラギヒロコ

テミン Instagram
https://www.instagram.com/lm_____ltm/

(提供:オリコン)




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