“ディズニーミュージック”作品の魅力

シェイクスピア悦子氏(ウォルト・ディズニー・ジャパン バイスプレジデント&ゼネラルマネージャー ミュージック、ライブエンターテイメント、クレジットカードアライアンス)
 昨年6月に音楽ソフト作品等について、日本における独占ライセンス契約締結を発表したウォルト・ディズニー・ジャパンとユニバーサル ミュージックが、さっそく“歌い手”を起用した斬新なコンピレーションアルバム『Connected to Disney』でスマッシュヒットを飛ばしている。両者のシナジーはいかにしてうまれたのか? ミュージック部門のトップとして2社の連携を推進するシェイクスピア悦子氏に連携の狙いや今後の展望を聞いた。

◆顧客の期待を超える 新しいアイデアを具現化したい

――昨年6月、ユニバーサルミュージックとの日本におけるライセンス契約締結を発表されました。
シェイクスピア 私どもはディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズという4つのブランドにおいて、日々、ゲストの期待を超えるものをお届けするべく、尽力しておりますが、なかでも、音楽においては国境を越えていろいろな取り組みをしていきたいと考えておりました。そこでグローバルに展開し、実績をお持ちのユニバーサルさんと連携し、互いにやりたいことなど意見をどんどん出し合って、良い形で化学反応を起こして、新しいアイデアを具現化していけたらと考えました。

――その連携第1弾作品として3月13日にリリースした『Connected to Disney』は、ネットシーンを中心に活躍する歌い手をシンガーに迎えた初のディズニー公式カバーアルバムで、参加した歌い手のファンはもちろん、ディズニーファンからも高い評価を得ました。成功要因をどのようにとらえられていますか。
シェイクスピア 音楽のビジネスは、担当者のパッションがすごく大きく影響すると思っています。ですからユニバーサルさんとビジネスを始めるにあたり、ブランドトレーニングを行った際も、やってはいけないことをお伝えするというよりは、ルールをわかっていただいたうえで、やりたいことをどんどん出していただき、一緒に展開したいとお話しました。『Connected to Disney』はそんななかから生まれましたので、関わるスタッフ全員がパッションを持ってプロジェクトを推進するという形で進められました。それが素晴らしい結果につながった要因だったと思います。また、これは参加していただいた歌い手の方々についても同じでした。全員、ディズニーが大好きで、各々が自分のディズニーとの接点を自分なりに解釈して、ファンはもちろん、それ以外の方々にも届けたいという熱い思いで制作にあたってくださった。こちらからはこうしてほしいという要望は何ひとつ出しませんでした。歌い手の方々の素直な気持ちが聴く人たちに伝わり、心に響いたのではないかと思います。

――『Connected to Disney』では、MVに関しても視聴者から多数称賛の声が寄せられたと聞きました。
シェイクスピア たとえば、『美女と野獣』のMVで、そらるさんの歌唱シーンの背景は青空、天月-あまつき-さんの歌唱シーンの背景は月、そらるさんとまふまふさんの歌唱シーンでは、彼らが組んでいる音楽ユニットAfter the Rainの名にちなんで、背景に雨や虹を置いたのですが、そのことに対する感動のコメントが多数寄せられました。ゲストの期待を超えることを常に考えている当社としては、そういう細かいこだわりは、いかにもディズニーらしく、私自身も大好きなのですが、何より、それをユニバーサルのスタッフが手掛けてくださったことに大変感激しました。

――常にファン視線で考えているということですね。
シェイクスピア ディズニーはコアなファンの方たちにお届けするものが多いので、コアファンが本当に何を求めているのかを考え、愛を持って寄り添うことを常に意識しています。私どものブランドプロミスは「Disney is special entertainment with heart」。一言でいえば「心を込めたおもてなし」です。ディズニーはお客様をゲストと呼びますが、それは自分の家に来てもらっている気持ちでおもてなしをしなさいという考え方からです。

――特定のキャラクターやコンテンツをフランチャイズと称し、全社を挙げて長期的にビジネス展開する“フランチャイズ戦略”を行っているのもゲスト視点という考え方からですか。
シェイクスピア 自分の好きなキャラクターとの接点を欲しているゲストに対して、できるだけたくさんの機会を提供するためには、部門を超えて、社内での連携を密にとって、すべての事業分野を連動させて横ぐしでビジネス機会の拡大を図るよう取り組むことが重要です。ゲストから見れば、ディズニーはディズニー、スター・ウォーズはスター・ウォーズで、部門がどうこうは関係ありませんからね。

◆コンサートは年間180公演 体験型の需要は高い

――近年は、世界的にもサントラのヒットが目立ちますが、映画音楽の可能性についていかがお考えですか。
シェイクスピア 当社のゲストの場合、映画を観た後、音楽を聴いて、その世界観をよみがえらせたいと思ってくださる方が多く、また、大好きだから常に触れていたいと思ってくださる方も非常に多い。ですから、サブスクリプションサービスなど、デジタルで好きな時に聞ける近年の状況は、非常にありがたいですし、デジタルに力を入れているユニバーサルさんがビジネスパートナーとなってくださったことも大変心強く思っています。一方で、当社のゲストは、フィジカルアルバムを保有したいという気持ちも強い。ディズニーでは、テーマパークが特徴的ですが、周年ものや、その時にしか手に入らないものを記念としてキープしておきたいと思われる方がとても多いので、音楽においても、そういうゲストの思いを超えるものを作っていきたいと考えています。

―― 一方、コンサートビジネスにも注力されています。
シェイクスピア コンサートに関しては年間約180公演を行っています。“モノからコト”とよく言われますが、デジタルの発展によりフィジカルの接点が減ってきている今、同じ空気を吸って、多くの人と時間を共有することもすごく求められていると、実際コンサート会場に行って、ゲストの顔を見たり、ゲストの生の声を聞いて感じていますので、今後もさらに感情的なつながりを熟成させた体験型イベントを増やしていきたいと思っています。ジャンルにおいても、今年17年目を迎えるクラシックにフィーチャーした「ディズニー・オン・クラシック」や、今年初の試みとなるビッグバンドをフィーチャーした「ディズニー・ワールド・ビート」、夏にはディズニー初の公式アカペラグループ「ディカペラ」によるコンサートを初開催します。クラシックやビッグバンドの公演はすでに多くのゲストから評価をいただいていますが、新たにチャレンジする「ディカペラ」も今からとても期待しています。全米各地からベストな7人をオーディションで厳選したディズニー初の公式アカペラグループが「ディカペラ」です。今までにない新しいディズニー音楽の体験になると思います。このほかにも、今後も幅広く展開してきたいと考えています。

――コーポレートマーケティング部門から音楽部門に移られてから1年半とうかがいました。最後に、現場を経験されて、今、音楽の可能性、面白さをどのように考えられているかお聞かせください。
シェイクスピア 昨年、「ディズニー・オン・クラシック」で、ミッキーマウスのスクリーンデビュー作『蒸気船ウィリー』をオーケストラとシンガーで再現したのですが、音楽というエレメントがつくだけで、命が吹き込まれてイキイキと動き出す現場を見て本当に感動しました。さらに、私はそれまで音楽はプレイリストで流しながら聴くことも多かったのですが、音楽部門に移ってから、すべてのノイズを切り落として、イヤホンで音楽を耳から流し込むことだけに集中したところ、細胞がプツプツ活性化するような体験をしたんです。映画を観た後、サントラを聴いただけで感動がよみがえりますが、音楽は聴くだけで、目の前に世界観が広がり、情景が目に浮かび、気持ちがポジティブになる。音楽の力というのは本当にすごいなと改めて強く感じていますので、今後も“with heart”でゲストの方々の期待を超えるような感動をお届けできるようがんばりたいと思います。

文/河上いつ子

●シェイクスピア悦子
ウォルト・ディズニー・ジャパン バイスプレジデント&ゼネラルマネージャー ミュージック、ライブエンターテイメント、クレジットカードアライアンス
早稲田大学商学部卒。電通などを経て2002年にウォルト・ディズニー・ジャパンに入社。06年に同社テレビジョン部門マーケティング・エグゼクティブ・ディレクターに就任。その後、バイスプレジデント/チーフ・マーケティング・オフィサーなどを歴任し、17年にミュージック、ライブエンターテイメント、クレジットカードアライアンスのバイスプレジデント&ゼネラルマネージャーに就任(現職)。

(提供:オリコン)




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